no.37 熟成
本日は「熟成」についてです。
なぜ発酵後時間を掛けて寝かせるのか?
なぜワインやブランデーウイスキーは樽を使って熟成されるのか?
などに注目してみていきたいと思います。
まず、熟成工程の基本的な考え方は
「お酒(エタノール水溶液)の味をまろやかにするための工程」と言えます。
化学的な話になるので少し難しくなりますが、発酵後時間の経っていないお酒の中では水分子とエタノール分子がばらばらに存在しています。その状態でお酒を飲んでみるとエタノール由来のとても刺激的で強い味わいがします。しかし、時間をおいて熟成させるとエタノール分子と水分子が結合し、口に含んだ際にも水がクッションの役割を果たしまろやかな味わいとなります。
若い時は棘があるけど、年をとると角が取れて丸くなるのと同じですね(笑)
次はなぜ樽を使うのか?主に4つの理由に分けられると思います。
①樽材から溶出するリグニンやその分解物、無機塩数が、水ーエタノールのクラスター形成を促進。簡単に説明すると、樽材の成分が先ほどの味わいをまろやかにする過程を促進します。
②樽材から溶出する成分、またはその成分が化学的に変化したものが蒸留酒の香味を高める。例えば、バニリンというバニラの香りを持つ成分や樽香の主成分であるケルクス・クラトンなどがそれにあたります。
③不快臭を有する硫黄化合物、ダイアセチル、アセトアルデヒトなどが蒸発。
④樽材由来のリグニンやその分解物が、脂肪酸などのエステル化を促進し、香りを向上させる。エステル香はフルーティーな香り。
樽熟成はさらに言及すると液体が空気と適度に振れやすい環境にあります。空気は適度に液体に触れるのであれば、熟成を手助けします。さらに瓶詰め後の事を考えると、消費者がボトルを開けるまで瓶内で液体は少しずつ熟成していきます。樽熟成とは違い、ワイン中のリンゴ酸、酒石酸、乳酸などとエタノールが反応してエステルができます。エステルは特有の華やかな香りを持っています。
まとめると樽熟成は「酸化的熟成」、瓶熟成は「還元的熟成」と言えます。
最後に樽の種類を簡単にみていきます。
使用する樽によってお酒の味わいはとても影響を受けます。子供が育つ幼稚園から高校までどういう環境を用意してあげるかによってキャラクターが形成されるのと同じです。そのくらい重要な工程だと言えます。
①ホワイトオーク
北米由来のきめが細かいオーク。空気の出入りが少なく接触が少ない。樽香、バニリン香が強くなる。蒸留酒によく使われる。
②リムザンオーク
フランスのリムザン地区でのみとれる樫材。きめが粗いので空気の出入りが多く接触も多い。タンニン含量が高い。ブランデーや高級ワインに多く使われる。
③アリエオーク(フレンチオーク)
きめが細かいので空気の出入りが少なく接触が少ない。タンニン含量が少ない。一般的なワインに多く使われる。
本日もありがとうございました。
次回は「no.38 ブドウ品種」です。お楽しみに^^
キングズ・バレー(King's Valley)
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